IRとCSRをちょっとナナメから考えてみる〜ある実務家の備忘録

統合報告書(Integrated Reporting)・IR(Investor Relations)・CSR(Corporate Social Responsibility)に関連するテーマについて、思ったことを書き綴っていくブログです。なにかの役に立てばいいなぁ☆

【健康経営銘柄】ROE基準に対する素朴な疑問と統合思考の活用について

健康経営銘柄2016の結果が発表されていましたね。

CSRテーマの話が続いていましたので、今回は少し違う視点から整理してみたいと思います。

 

 

健康経営銘柄?ふぅ~ん…こんなのもあるんだって感じ

まず、健康経営銘柄ってなに?って人は下記をご参照ください。

 

www.meti.go.jp

 

なんとなく理解できましたか?

 

下記記事では、TOPIXとの比較結果も発表されています。

  

blog.livedoor.jp

 

これをみると、企業としての成長も果たしながら従業員の健康にも配慮できる企業ってめちゃくちゃ良いじゃん!みたいな印象は出てきますよね。

 

特に就職に関連する学生からすれば、選定企業に対するレピュテーション上がりますよね。親御さんも安心するというか。

 

こういった取り組み自体は歓迎されるものですが、一方で素朴な疑問も出てくるのであります。

 

それが選定基準に関する部分。

 

<選定基準>

  1. 「健康経営度調査」の総合評価の順位が上位20%以内であること
  2. 過去3年間のROEの平均値が業種平均又は8%以上であること

※ その他:重大な法令違反等がないこと

 

 

ROEの部分ではじかれちゃう企業って結構ありそう

 

選定基準について文句があるわけでもないし、経済産業省が主導する取り組みなのでROEが絡む理由もハッキリしています。伊藤レポートとかね。

 

しかし、この低ROE国家と揶揄される日本において、8%以上を基準にした場合、けっこうこぼれる企業ってあるよねって思うわけです。

 

既に一定のROEを達成している企業を中心としたスクリーニングという意味では全く問題ないんですが、基準に満たない故にこぼれてる企業ってちょっと不憫だなぁと。

 

そういった目で見てみると、割とROEがもともと高め(になる)業種や企業が中心になるよなぁと新たな気付きも出てきました。

 

ROE改善と健康管理の取り組み改善、優先すべきはどっちだ?

 

なお、選定された企業はこぞってプレスリリースを出してるわけですよ。

喜ばしいことですし、これまでの取り組みが評価された結果でもあるわけなので。

 

まぁわかりきった事を言えば、選定されてバンザイ!ではなく一層の努力が求められますよね。

 

また、選定されなかった企業も課題認識にはなるわけで一定のモチベーションだったりも出てくると思います。

 

この時に考えてみたいのが、ROE改善と取り組み改善のどちらをファーストプライオリティとするかです。

 

ここで出てくるのが、毎度おなじみ組織間のサイロの問題です。

 

ROE改善を推進する部署と、健康管理に取り組む部署はだいたい違うはずです。

同じ部署があったら先進的過ぎるので、ぜひ教えていただきたい。

 

思い付きだけど、例えば対応案が下記2案あったとします。

 

ROE改善の手段として健康管理にも取り組むのか

②健康管理とROEは論点が違うから別個の課題とするか

 

捉え方ひとつでその後のアクションも当然違ってきますよね。

 

①でいえば、小粒な取り組みで考えられるのが、当期純利益を少しでも下げとめるために、社員の残業を抑制し一般管理費を抑えていくという方法が考えられます。

 

まぁこれはあまりにもケチくさ過ぎて従業員からは総スカンになりそうですが、手段としては考えられるわけです。

 

②は部署別の取り組み課題として、個別に取り組んでいく。この場合は、数値的な関連性は決算発表時の結果としてしか見えてこないのが懸念ですね。

 

健康経営銘柄選定から統合的思考を考えてみる

 

毎回の着地点としては、ひとつの事象から次につながる効果的なアクションが踏み出せるかということを考えてみたいと思います。

 

ちなみに、統合思考については下記をご参考ください。

 

統合思考

 

統合思考は、組織内の様々な事業単位及び機能単位と、組織が利用し影響を与える資本との間の関係について、組織が能動的に考えることである。統合思考は短、中、長期の価値創造を考慮した、統合的な意思決定と行動につながる。統合思考は、次のような、組織の長期にわたる価値創造能力に影響を与える要素間の結合性と相互関係を考慮するものである。

 

・ 組織が利用し、影響を与える資本やトレード・オフなどを含む資本間の相互関係
・ 組織の主要なステークホルダーの正当なニーズと関心に対応する能力
・ 組織の外部環境、組織が直面するリスクと機会に対応するために、組織がどのようにビジネスモデル及び戦略を組み立てるか。
・ 過去、現在、将来における、資本に関する組織の活動、実績(財務及びその他)並びにアウトカム

 

統合思考が組織活動に浸透することによって、より自然な形で、マネジメントにおける報告、分析及び意思決定において、情報の結合性が実現されることになる。さらに、統合報告書の作成も含め、内部及び外部に対する報告やコミュニケーションに資する、情報システムのより良い統合にもつながる。

 

 

ここで考えたいのが、銘柄選定をゴールとした際に複数部署にまたがる課題があるということを認識することです。

 

機能別組織におけるサイロは仕方がないこととはいえ、やはりどこかで部署間調整なり話し合う場が必要となってくるわけです。

 

CSR部署かIR部署か、どちらが主体となるかは企業によって様々だと思いますが、こういったテーマをきっかけにお互い話し合ってみてはいかがでしょうか。

 

 

本日は長くなってしまいましたが、最後までご精読いただきありがとうございました☆